辻邦夫さん~Innovation for NEW HOPEへの想い~

辻邦夫さん~Innovation for NEW HOPEへの想い~

日本で最先端の治療法が一日でも早く、継続して届く社会の実現のために、発足したこのInnovation for NEW HOPEプロジェクト。6名の発起人に、現在の取り組まれていることと、それに至った背景についてお伺いするとともに、このプロジェクトにかける想いをお話いただきました。
今回は、日本難病・疾病団体協議会(JPA)常務理事の辻邦夫さんです。
インタビュー実施日:2024年3月14日


Q. これまでの経歴と、現在取り組まれていることについてご紹介ください。

企業に勤める社会人としてとして、ごく普通に皆さんが進むような道、平社員からどこまでキャリアアップ(出世)できるのかな?などという期待も持ちながら、私生活では家庭を持ち、子供を育てるというごく普通の生活を送っていました。しかし、44歳のときに体調の異変を感じ、かかりつけの医者を受診したところ、「珍しい病気かもしれないから大きな病院を受診したほうがよい」と言われ、「人間ドックをやっているような大きめの病院でいいですか」と聞いたところ、「いや、大学病院に行ってください」と言われました。その時は、そこまでの不調ではなかったため、自分の身体に何が起こったのだろうと不安を感じました。結果として、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)という免疫系の異常から起こる難病であることがわかりました。

「難病って何なの???」と、自分自身に降りかかってきた病気は初めて聞くものでしたが、命に関わる病気でなかったことには少しだけ安心できました。しかし、家も買ったばかりだし、生活も大変になるかもしれないことを、妻と相談したことは今でもよく覚えています。

その後、東京都に住みながら神奈川県の医療機関で短期の入院をして治療を受けました。ありがたいことに、当時の東京都は難病に対する医療費助成制度を今でいう指定難病以外の疾患でも独自で多く実施していたため、私は治療に対する助成を受けることができました。しかし、その当時CIDPは全国の指定難病(当時は特定疾患)には含まれておらず、隣のベッドの神奈川県の人は制度がないために助成が受けられないという状況でした。CIDPの治療には当時150万円くらいの医療費がかかり、高額療養費制度が後払い方式であったため経済的な負担も大きく、同じ病気の患者たちのなかにはお金のやり繰りに苦労している人も少なくないということを知りました。また、同じ病気でも住む場所によって受けられる支援が異なるということに気づき、強い疑問を感じました。その時に、今所属しているJPA(一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会)が、患者に対する様々な支援活動や、このような問題の解決に向けた活動をしていることを知り、関わり始めたというのが、私の病気との出会い、そして患者さんの想いとの出会いです。

 難病というのは、聞いたこともない病気であり、家族や友人に説明するのも難しく、なぜ自分に起こってしまったのかということも考えてしまいます。難病はその疾患は様々ですが、難病法の基本的な認識にあるように、誰にでも発症する可能性があり、それは多様性を持つ人間にとっての必然であります。そして私自身がその一定の割合のなかにたまたま放り込まれたのだと思っています。

Q. 今の医療課題についてどのように思われていますか?

私自身の経験から、難病の研究や治療を推進するためには、社会全体での理解と支援が必要だと感じています。新薬の開発や再生医療などの進展は、長期的には経済に大きな影響を与える、つまり、病気を持ちながらも働くことが出る方が増え、全体のコストが抑えられる可能性があります。

皆がお金を出し合っている皆保険制度ですので、それをどのように使っていくのか、私たち自身も考えていかなければならないと強く感じながら毎日を過ごしています。

これまでは治療薬がなかったり、薬があっても病気の進行を遅らせるだけだったのに、遺伝子治療や再生医療といった根治に繋がるかもしれない治療法への期待があります。根本治療というアプローチは、同じ薬を一生飲むという負担がなくなり、数回の治療で改善される可能性があることは、非常に期待があります。

遺伝子治療や再生医療は高額になると言われていますが、治療期間が短くなることで、その患者の治療全体にかかる費用を考えたら、負担が軽くなることもあるかもしれません。

日本の場合、国民皆保険制度の下で財源が問題となっていることや、丁寧に薬を創るという日本の良さはありますが、それが仇となり他の国より規制が厳しくなっていることで、アメリカや中国といった国に開発で遅れを取ってしまっているのかもしれません。このような問題に対し、どうやってうまく変えていけるのか、患者さん、お医者さんだけではなく、市民のみんなが一緒になって考えていくべきではないかと思っています。


Q. 医療に関するマルチステークホルダーや多様な人たちが集まって議論をする場であるInnovation for NEW HOPEにどのような期待をしますか?

 私はこのプロジェクトに非常に期待しています。医療制度の課題を患者、医師、研究者、市民が一緒に考え、より良い未来を築くための試みは非常に重要です。医療の進歩とそれに伴う社会の変化に対して、私たち一人ひとりがどのように向き合い、貢献できるのかを考えていくことが大切だと思っています。

よろしければSNS等で大切な方にご共有いただけると嬉しいです!

公式Xアカウントもぜひフォローください!