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細胞医療製品が患者さんに届くまで

細胞医療製品が患者さんに届くまで

医療分野における最も革新的な進歩の一つとして注目されているのが、細胞医療製品の開発です。その進展は、病気や怪我に対する治療法を根本から変える可能性を秘めており、未来の医療に大きな影響を与えると期待されています。
しかし、実際に一つの細胞医療製品が患者さんのもとへ届くまでには、多くのステップと厳密な評価が必要です。

この記事では、細胞医療製品がつくられるプロセス、それを取り巻く課題、そして最終的に患者さんに届けられるまでの道のりを、詳しく掘り下げていきます。

01.細胞医療とは

 


私たちの身体は、1つの受精卵が分裂・増殖を繰り返して様々な機能に特化した細胞に分化することでできています。

大人1人は約37兆個の細胞でできていると言われていますが、細胞の数が増減したり、細胞の働きが強くなりすぎたり、弱くなりすぎたりすることで、様々な病気を引き起こす原因にもなります。
細胞やその中の遺伝子が原因となる病気や疾患の中には、既存の薬や治療法では対応できないようなものもあります。
そこで新しい細胞を身体の中に入れることで、身体の機能を健康な状態に近づけることを目指すアプローチが、「細胞医療」です。

02.細胞医療製品ができるまで


では、細胞医療製品はどのようにできるのでしょうか?

まず、細胞医療製品の出発点は、「多能性幹細胞」という様々な機能を持った細胞に変化(分化)できる細胞です。

 


多能性幹細胞を増殖させて、治療に使う機能を持った細胞(目的細胞)に分化させます。細胞を分化させたら品質試験を経て容器に充填します。

以上が細胞医療製品ができるまでの流れですが、高い品質の製品をつくるためのポイントは何でしょうか。

まず、製品の“もと”となる多能性幹細胞を複数確保し、目的とする細胞をつくるために最適な多能性幹細胞を選ぶこと、そして、高品質な多能性幹細胞を増やすために、細胞を増やす培地の成分や温度等の条件を厳密にコントロールすること、さらに、目的とする細胞に分化させるために、試薬を適切に加えるだけでなく、培養する温度等の条件を長期間厳密にコントロールすることが必要です。

なお、できあがった細胞の品質を見極めるために、多能性幹細胞が目的とする細胞に分化しているか、分化していない多能性幹細胞が残っていないか、しっかり確認することが必要です。
もちろん、これらを肉眼で判断することはできません。

目的とする細胞の特徴を示す形になっているか顕微鏡で確認したり、細胞に発現する遺伝子やその遺伝子から作られるタンパク質の量を確認したりすることで、目的とする細胞に分化したことを確かめています。

分化していない多能性幹細胞が残ったまま体内に投与すると、体内で異常増殖する可能性があるため、分化していない多能性幹細胞はできる限り取り除きます。

このような判定の基準を作ることにも専門的な知識や経験が必要です。

04.細胞医療が患者さんに届くまで

最後に、細胞医療製品が製造された後に、医療機関を通じて、患者さんに届くまでの流れを見ていきましょう。 


製造元から細胞を出荷したら一旦細胞加工施設を通して医療機関に届けられる流れのため、最終製剤の保存期間が短く、提供可能な医療機関が限定されるという課題があります。
その課題を解決するために、以下の画像のように製造元から直接医療機関に運んで患者さんに投与できる製剤の開発も進められています。
このような製剤は、より多くの医療機関でより多くの患者さんに細胞医療製品を届けることができ、製品の輸送や管理のコストも低下することが期待されます。 







05.まとめ

本記事では、細胞医療製品がどのように製造されて、患者さんに届くのかという流れをご紹介しました。

細胞医療製品の製造や流通は、これまでの医薬品に比べて煩雑で大変です。
しかし細胞医療製品には、これまで効果的な治療法がなかった病気を抱えている患者さんにとって、新しい治療の選択肢となる可能性があります。

Innovation for NEW HOPEプロジェクトは、「日本で最先端の治療法が1日でも早く、継続して届く社会」の実現を目指し最先端の治療法に関わる情報を発信していきます。 

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